ねつをのブログ

インプット意識の高い就活生がアウトプットします。

山岳部は就活最強の部活であるという話

筆者は2年半山岳部に所属していました。そこで得られた経験が凄く大きかったので、偉くなったら「大切なことは全て山岳部が教えてくれた」という本を書いてみたいものです。冗談は良しとして、日本の就活市場ではやはり体育会が強い傾向にあります。

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要するに、「愚直さ・体力・コミュニケーション能力」というビジネスマンの基本スキルが身につくことが評価ポイントだと思います。幹部はこれに加えて、OBなどの社会人との接点が日常的にあります。監督へのポイントを押さえた報告、お爺ちゃんOBへの接待といったビジネスライクな会話スキルを学んでいるため、面接段階で体育会の幹部学生は眩しく見えるはずです。

そんな就活猛者の体育会の中でも、山岳部で得られる経験やスキルはメジャー部活に引けをとらない、と筆者は思うわけです。いや、寧ろ最強ではないかとも思うわけです。まず、山岳部ってどんなところを登るの?という人が多いと思うので、筆者の山岳部時代の写真を紹介します。

川の下流から上流に向けて滝やゴルジュを超えて登頂します。主に夏シーズンにやり、焚火をしながら数日間かけて突破することもあります。沢の水が最高に気持ち良いです。

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フリークライミングと似ているのですが、ロープの支点やボルトが無い場合が多く岩角などにスリングを括って即席支点を作ることが多いです。岩壁に辿り着くまでのアプローチに雪渓のような登山ライクな難所が出てくることもあります。

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山岳部の王道、冬山登山。これをよりグレードアップさせたものが冬壁といって、上記のアルパインライミングを冬山でやる登山スタイルもあります。山野井泰史さんのような日本を代表する登山家がこういったスタイルでヒマラヤに挑戦しています。

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 こういった大自然に身一つで挑戦する、浪漫あふれるアクテビティーを全力でやる環境が山岳部にあるのです。以下にビジネスシーンに通用するスキルを3点紹介します。

PDCAサイクルを高速で回しまくる。

よく意識高い系の学生が「PDCAを回しまくってさ~」と聞いたことありませんか?それです。「Plan→Do→Check→Act」のサイクルで業務管理する手法です。山岳部ではこれを高速で回します。だって、絶対に死にたくないですもん。具体的には、年度目標とする登山を成功させるために戦略を立てます。「ステップバイステップ」にチームの実力と目標との距離を測りながら、適切なステップを設定します。長期的な視点だけでなく、短期的な視点で目の前の登山計画をどうやって成功させるか、戦術を考えます。「日程に余裕を持たせてみるか」それとも「短期決戦で行くか」、「荷物に何を持っていくか」、いろんな策を練ります。それをコーチにプレゼンテーションし、成功への確信を訴えるわけです。そして、帰ってきたら反省をしてまた繰り返しです。学生時代にこれほどPDCAサイクルを重要視するのは、山岳部ぐらいじゃないでしょうか。

想定外のリスクへの対応力がつく。

筆者の山岳部には「重装主義」という概念があり、プランニングを徹底し「想定を重ねて」登頂することを指します。「答え合わせのために登る」というやつです。山岳部の山登りは上に紹介したような登山道ではないバリエーションルートを志向します。当然、いろんなリスクが伴います。沢登りでは突発的な水位の上昇、冬山では爆弾低気圧による雪崩、色々です。山岳部のプランニングは、失敗を前提に多種多様なリスクを想定しそれをカバーできる戦術を練り上げるのです。が、現場にいけば想定外がたくさん生じます。例えば、後輩がテントの中で発狂し失踪する、落石でロープに宙吊りになる、吹雪でルートが分からなくなる、様々です。こういった場面に直面した時、「思考停止」 していたら帰ってこれないわけです。寒くて震える、高度障害が出て頭が痛い、疲れた、リーダーは弱音を吐けません。「絶対に安全に下山する」という強烈な意志で頭を動かし打開策を打ち出す、そんな想定外のリスクへの対応に優れた素晴らしいリーダーが先輩にいました。

リーダーシップの神髄を学ぶことができる。

昨今、日本のリーダー人材が不足しているという話はよく聞きますが、そもそもリーダーシップとは何なのでしょう。偉大な山岳部OBが「リーダーシップとは、背筋を伸ばして背中を見せて背中を押すことだ」と言っていました。つまり率先垂範で逞しい背中を見せて、後輩の成長のためにそっと背中を押す。どちらかといえば組織運営のリーダーシップでしょうか。一方で先輩が「リーダーシップとは情熱を持って目標に執着すること」と言っていました。これはプロジェクトマネージメントのリーダーシップと言うべきでしょうか。どちらも根底にあるのは、「その登山を成功させたい」という迸る熱いパッションです。現役時代、よく人から「なぜ山を登るのか」と問われました。サッカー、野球をやっている人に同様の質問をするでしょうか。しないでしょう。一方で、山岳部のコーチへのプレゼンでは、「なぜその山に登りたいのか」「なぜそいつと登るのか」を徹底的に問われます。「目標達成の執着心」が安全に帰ってこれるかを左右するからです。厳しい大自然に挑むからこそ、登る人間の熱い気持ちが成功に不可欠なのです。勿論、左脳を使ってプランニングすることも大切です。しかし、現場で起きることの大半が想定外ばかりです。究極の環境下では右脳が左脳を動かし、情熱が人を動かします。社会人経験はありませんが、きっとこれがリーダーシップの神髄なんだろうなと思います。

最後に

山岳部出身の政治家、社長は多いです。自民党谷垣禎一氏が有名です。

マッキンゼーの採用マネジャーを12年務めた伊賀泰代氏が採用基準として、

マッキンゼーをはじめとする外資系企業の多くでは、すべての社員に高いレベルのリーダーシップを求めます。アメリカの場合は、大学や大学院の入学判定に使われる小論文でも、過去のリーダーシップ体験は常に問われる最重要項目なのです。

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と述べ、リーダー経験の重要性を主張しています。山岳部ではリーダーシップは勿論のこと、「リーダーシップとフォロワーシップ」を大切にし後輩フォロワーに対してもリーダーの役割を理解した上での立ち回りを求めます。山岳部員は「どの山を/どのように/誰と登るのか」というビジネスシーンで不可欠な思考体力を身に着けるわけです。就活シーンではサークルのリーダーが乱立するようですが、リーダーシップの理論と実践を繰り返し学ぶ場として山岳部は最高の環境ではないでしょうか。

山岳部の戦うフィールドは大自然。行き先は無限大。海外登山に挑戦するだけのOBネットワークとその経験の蓄積がある。「知力・気力・体力」を駆使し誰も挑戦したことのない「パイオニアワーク」を夢見て、本気で登山に打ち込む大学ライフも悪くない。圧倒的成長をしたい、人と違う経験をしたい、自然が大好き、な新入生は山岳部の門を叩いてみたら、という話でした。